「以前は痛くなかったのに、最近は挿入すると痛い」
「濡れにくくなって、セックスを避けるようになった」
40代・50代になってから、このような変化を感じることがあります。
更年期前後には女性ホルモンの変化によって、膣や外陰部の乾燥、性交痛などが起こることがあります。日本産婦人科医会も、エストロゲン低下に伴う膣・外陰部の変化として、乾燥感や灼熱感、性交痛などを挙げています。日本産婦人科医会
ただし、性交痛の原因がすべて「更年期だから」「乾燥しているから」とは限りません。
膣の入口が痛いのか、奥のほうが痛いのかによっても考えられる原因は異なります。痛みが続く場合には、感染や炎症など別の原因がないか確認することも重要です。
我慢して性行為を続ける前に、身体に何が起きている可能性があるのか整理してみましょう。
更年期になると性交痛が起こりやすくなる理由
更年期前後には、卵巣から分泌されるエストロゲンが変動し、やがて低下していきます。
エストロゲンは膣や外陰部の状態にも関係しています。
エストロゲンが低下すると膣粘膜が薄くなり、潤いが減ったり、組織の修復力が低下したりすることがあります。日本産婦人科医会は、閉経前後から膣粘膜の新陳代謝が遅くなり、粘膜が薄くなることなどをGSMの病態として説明しています。
その結果、
・以前より濡れにくい
・挿入すると擦れる感じがする
・ヒリヒリする
・性行為中に痛む
・性行為後まで痛みが残る
といった変化が現れることがあります。
「前は大丈夫だったのに」という変化には、こうした身体的な理由が関係している可能性があります。
更年期の性交痛に関係する「GSM」とは
更年期以降の性交痛を理解するときに知っておきたいのが「GSM」です。
GSMはGenitourinary Syndrome of Menopauseの略で、日本では閉経関連泌尿生殖器症候群などと呼ばれます。
性交痛だけを指す病名ではありません。
日本産婦人科医会では、GSMにみられる症状として、
・膣や外陰部の乾燥感
・灼熱感
・疼痛や不快感
・性交痛
・潤滑不足
・排尿時の違和感
・尿意切迫感
・尿路感染症の反復
などを挙げています。
つまり、更年期になって「セックスのときだけ痛い」と思っていたものが、実際には膣や外陰部、尿路を含めた一連の変化の一部である場合があります。
ただし、性交痛があるからといって自分でGSMだと診断することはできません。似た症状を起こす別の病気もあるためです。
「入口が痛い」のか「奥が痛い」のかを確認する
性交痛を考えるうえで重要なのが、どこが痛むのかです。
単に「セックスすると痛い」だけではなく、
「入るときに痛い」
「膣の入口がヒリヒリする」
「奥まで挿入されたときに痛い」
「性行為が終わった後も痛い」
など、痛む場所やタイミングを整理すると、婦人科へ相談するときにも伝えやすくなります。
膣の入口付近が痛い場合
更年期前後で膣や外陰部が乾燥し、組織が刺激を受けやすくなっている場合、挿入時に入口付近で摩擦や痛みを感じることがあります。
十分に潤っていない状態で挿入すれば、さらに摩擦が強くなります。
「挿入するとヒリヒリする」「擦れて痛い」という場合は、乾燥やGSMなどが関係している可能性があります。
ただし、感染、炎症、皮膚疾患などでも外陰部や膣周辺に痛みが生じることがあります。日本産婦人科医会も、GSMを診断する際には膀胱炎、外陰ヘルペス、カンジダ膣炎、萎縮性苔癬など、別の原因を除外する必要があるとしています。
そのため、入口が痛いからといって「乾燥だけ」と決めつけるのは避けましょう。
奥のほうが痛い場合
深く挿入されたときに膣の奥や下腹部が痛む場合は、乾燥による入口付近の摩擦だけでは説明できないことがあります。
婦人科領域を含め、さまざまな原因が考えられるため、繰り返す場合は医療機関で相談したほうがよいでしょう。
特に、これまでなかった奥の痛みが続く場合に「更年期だから」と自己判断することはおすすめできません。
痛む場所、いつから始まったか、毎回なのか、特定の体位だけなのかなどを記録しておくと、診察時の情報になります。
濡れにくいまま無理に挿入しない
更年期前後の性交痛で、すぐにできることの一つが「痛いまま続けない」ことです。
乾燥して摩擦が強い状態で性行為を続ければ、不快感や痛みが強くなる可能性があります。
一度「挿入すると痛い」という経験をすると、次の性行為でも「また痛くなるのでは」と身構えてしまうことがあります。
その結果、身体に力が入り、性行為を楽しめなくなるという悪循環につながることもあります。
以前と同じようにできることを目標にする必要はありません。
身体の状態が変わったなら、性行為の方法も今の身体に合わせて変えて構いません。
性的興奮に必要な時間も見直す
濡れにくさはエストロゲンの変化だけで決まるものではありません。
性的興奮の程度も膣の潤いに関係します。
疲れている、ストレスが強い、痛みへの不安がある、十分に気持ちが高まる前に挿入している、といった状況が重なれば、さらに痛みを感じやすくなることがあります。
以前より時間をかける。
痛みを感じたら止める。
挿入以外のスキンシップを増やす。
「セックス=必ず挿入までしなければならない」と考えない。
こうした調整も選択肢です。
潤滑剤は性交時の摩擦を減らすために使える
乾燥による摩擦がある場合、潤滑剤は性交時の痛みを軽減するための選択肢になります。
日本産婦人科医会も、膣の乾燥に対する保湿剤、性交時の疼痛軽減を目的とした潤滑剤について説明しています。
「自然に濡れなければいけない」
「潤滑剤を使うのは年齢を認めるようで嫌だ」
と考える必要はありません。
潤滑剤は、性交時の摩擦や痛みを軽減するために利用できる選択肢の一つです。
ただし、製品によっては刺激を感じることがあります。使用してヒリヒリする、赤くなる、痛みが強くなるなどの変化があれば使用を中止し、必要に応じて医療機関へ相談してください。日本産婦人科医会も、潤滑剤は製品や使用状況によって刺激・炎症を起こす場合があるとしています。
性交時の乾燥対策については「性交時の乾燥には何が使える?」で詳しく解説します。

潤滑剤を使っても痛いなら「乾燥だけ」と考えない
ここが重要です。
潤滑剤を使えば摩擦は減らせますが、性交痛のすべてを解決できるわけではありません。
十分な潤滑があっても痛い。
入口ではなく奥が痛い。
性行為以外のときにも痛い。
痛みが次第に強くなっている。
こうした場合は、単なる潤滑不足だけではない可能性があります。
日本産婦人科医会は、GSMに似た症状についても感染・炎症、腫瘍性病変、骨盤臓器脱などがないか確認することを示しています。
「潤滑剤を使ってもダメだから我慢する」のではなく、原因を確認する段階と考えてください。
更年期の性交痛は婦人科で相談できる
性交痛はプライベートな問題なので、
「こんなことを病院で相談していいの?」
「年齢的にセックスの話をするのが恥ずかしい」
と感じる人もいるかもしれません。
しかし、性交痛は婦人科で相談できる症状です。
原因がGSMなど更年期に伴う変化であれば、症状や健康状態に応じて治療が検討されます。
日本産婦人科医会の資料では、GSMに対して保湿剤や潤滑剤などの非ホルモン療法のほか、症状によって局所エストロゲン療法などが扱われています。
治療法には適応や注意点があるため、ホルモン製剤などを自己判断で使用するのではなく、医師に相談してください。
こんな性交痛は「更年期だから」で済ませない
更年期前後に性交痛が起こることはありますが、年齢だけで原因を決めることはできません。
次のような場合は婦人科への相談を検討してください。
・性交痛が繰り返し起こる
・痛みが強くなっている
・潤滑剤を使っても改善しない
・膣の奥や下腹部が痛む
・性行為以外でも外陰部や膣が痛む
・強いかゆみや灼熱感がある
・おりものの量、色、臭いなどに変化がある
・排尿時にも痛みや違和感がある
・性行為後に出血する
・閉経後に出血がある
GSMのような更年期に関連する変化だけでなく、感染や炎症などを除外する必要がある場合があります。日本産婦人科医会
特に出血や強い痛みなどを伴う場合は、「年齢によるものだろう」と自己判断しないことが重要です。
性交痛を我慢してまで以前と同じ性生活を続けなくていい
更年期前後に性交痛が起こる背景には、エストロゲンの低下に伴う膣や外陰部の変化が関係していることがあります。
その代表的な状態の一つがGSMです。
ただし、「更年期の性交痛=乾燥」と単純に考えることはできません。
入口が痛むのか、奥が痛むのか。乾燥感があるのか。性行為以外でも痛むのか。おりものや出血など別の症状がないか。
こうした違いを確認することが大切です。
乾燥による摩擦が考えられるなら、十分に時間をかける、無理に挿入しない、潤滑剤を使うなどの方法があります。
それでも痛いなら、我慢するのではなく婦人科へ相談してください。
「以前はできたのだから、今も同じようにできなければいけない」と考える必要はありません。
身体が変化すれば、快適な性生活の形も変わります。
痛みを我慢することではなく、今の身体に合った方法を探すことが大切です。
※本記事は一般的な健康情報を提供するもので、個別の診断や治療を目的としたものではありません。性交痛が続く場合や、強い痛み、出血、おりものの異常などがある場合は医療機関へご相談ください。
参考情報
本記事の医療部分は、日本産婦人科医会「中高年女性のケア・アップデート」のGSM病態・診断資料および性交痛に関する資料を中心に確認しています。GSMでは乾燥感、疼痛、性交痛、潤滑不足、排尿症状などがみられ、類似症状を起こす感染症などを除外する必要があるとされています。日本産婦人科医会
